スッキリ読みやすい短歌入門書『のんびり読んで、すんなり身につく いちばんやさしい短歌』が5月20日に発売されました。短歌の入門書というと雑誌の入門記事をまとめたものも多くみかけますが、本書は書き下ろされたもの。1冊の本として全体の構成がしっかり練られ、短歌の入門者に必要な知識が漏れなくまとめられています。
著者は歌人の横山未来子さん。今年の現代歌人協会主催「全国短歌大会」では選者を担当されるとのこと。またオンラインの短歌講座の講師も務めておられるそうです。
なるほど本書の説明が初心者の気持ちに寄り添ったものになっていると感じるのは、そういうことなのかと思いました。
今回は、この本を読んでみて筆者が感じたことを率直にお伝えします。また、著者の横山未来子さんにもコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
▼著者情報
横山未来子(よこやまみきこ)
Twitter @yokoyama_mikiko
歌人、「心の花」選者。1972年、東京都生まれ。1996年短歌研究新人賞受賞、2008年『花の線画』にて葛原妙子賞受賞、2021年『とく来りませ』にて第8回佐藤佐太郎短歌賞受賞。
著書は他に『樹下のひとりの眠りのために』『水をひらく手』『金の雨』(短歌研究社)、『午後の蝶』(ふらんす堂)、『はじめてのやさしい短歌のつくりかた』(日本文芸社)など。
この本を手にして、まず良いなと思ったのは、短歌入門者に必要な情報が網羅され、読みやすく整理されている点です。整理されているので後から読みたい場所を探すのも簡単です。さらに、初歩を学んだ後、進むべき目標も示してくれており、そこもいいなと思いました。この本一冊で短歌を学び、その先何を目指すかという全体像を描くことができます。
まずは入門者向けに短歌の基本からはじまって、第2章では短歌を詠む(作る)ことについて、第3章では短歌の鑑賞について。最後の章では短歌の添削から学ぶ、という章立てになっています。
短歌を詠む、がテーマの章では、短歌の作り方だけではなく、一歩進んで短歌サークルや短歌講座で学ぼうという方のために、具体的な講座名を挙げての説明も。そしてさらに歌会、結社についても触れています。連作、新人賞のことや歌集の作り方も丁寧に説明されていて、ひとりで初めて短歌に触れる方にやさしい。短歌を詠むということの向こう側の風景も見えてくるので、自然とやる気も湧いてきます。
私がとても興味深かったのは、著者の横山さんがどうやって短歌を作っているかを解説したページです。これって、短歌初心者にとってまさに知りたい部分なのではないでしょうか。歌の素材をどう見つけて、どういう過程で仕上げまで至っているか。どんな道具を使っているか。さらにはスランプの時どうしたら良いかまで! とても細かい配慮が行き届いているなと感じました。
もう一点、触れたいことがあります。装幀・装画が美しいということ。表紙の色合いと本文の色合いがマッチしていて統一感があり、気分が上がります。さらに書籍後半の章ではまた違った色合いでページ全体にグラデーションがかけられています。詩や短歌の本って、装幀が綺麗で持っているだけで嬉しくなるというプラスアルファの部分も大事だと思うのです。入門書でそこまでこだわって作られているなんて、素敵な配慮だなと思いました。
この本を一言で表現すると、極めて具体的に、あらゆる短歌入門者の疑問に対する答えが詰め込まれている本、ということになるでしょうか。しかも装幀がおしゃれなんです。
――著書のご紹介をお願いします。
【横山さん】短歌をつくってみたいけれど一歩がなかなか踏み出せないという方や、短歌をもっと深く知りたいという方、どちらにも楽しんでいただける本になってくれたらと思いながら書きました。
短歌結社への入会、歌集のつくりかたなど、私自身が最初は未知の世界だったものも、実体験をもとにご紹介しています。
また、短歌をじっくりと「読む」おもしろさについて書いているのも特徴かと思います。
――今後の活動予定について教えてください。
【横山さん】現在、NHKカルチャーのオンライン講座「詠む・読む やさしい短歌」を担当しています。
10月には現代歌人協会主催「全国短歌大会」の選者を担当します。作品の応募締め切りは、6月17日です。
『のんびり読んで、すんなり身につく いちばんやさしい短歌』
横山未来子著、日本文芸社
2022年5月20日